当院にも、耳鳴りや難聴を切っ掛けとした来院をされる患者が最近ではよく見受けられます。前者は風切りのような音や、唸り声のような音が耳内でするのですが、原因究明が困難であり、自覚症例の一つで正確な検査法が確立されておらず、検査で障害部位を診断することは困難とされます。

対して、後者は感音性難聴(SHL:Sensorineural Hearing Loss)及び伝音性難聴(CHL:Conductive Hearing Loss)に分類され、感音性では蝸牛有毛細胞の機能消失、伝音性は中耳の正常な機能が消失した場合とされます。

完全に聴覚を喪失した場合は、鍼灸でも回復は見込めませんが、耳鳴りに至っては、耳に対する疎通を改善するように施術をすることで、徐々に快復への手立てが高まります。

他方、天候による気圧変動は、日常生活において重大な影響を及ぼします。新幹線に乗車している時に、車内でトンネルから出入りする際に耳内で閉塞感がするのは生理的現象であり、急激な気圧変動により一時的に聞こえが悪化するだけで直ぐに元通りに回復します。

しかし、低気圧(台風を含めて)の通過による気圧変動は、多くの場合急激ではなく、持続的に起き得ますので、雨天や雪天が続いている状況下では、よく頭痛や倦怠感、耳鳴り、自律神経の乱調等を来すといった具合の事柄が聞かれます。

内耳には身体の平衡感覚に関わる機能が備わっており、蝸牛の隣にある「半規管」と「耳石器」の2部位で機能形成をしています。前者は細い管状の構造で、水平方向の回転を感知する「外側半規管」、垂直方向の回転を感知する「前半規管」及び「後半規管」の3つの半規管が「耳石器」(饅頭型)の形をした部分に接続されております。半規管群は互いに離れており、3D空間を感知できるようになっています。

その半規管の機能が傷害されるような外的要因を受けた場合に、自律神経の乱調を来しやすくなります。不眠や更年期障害等といった、生理的にも重大な影響を来すことも少なくありません。

そこで、多くの場合には薬物の大量投与が為されるのですが、姑息的手段にしか過ぎません。却って、心身に対する「薬害」を生じることで、心身破綻への道筋と化してしまいます。

視覚や深部知覚が傷害された場合には、眩暈は一時的で、姿勢も一時的に悪化するだけに止まりますが、回転性の眩暈は内耳の障害によります。聴神経を通して、頚肩部の筋緊張を併発しやすくなります。

季節の変わり目に自律神経の乱調を来しやすいとされるのは、内耳の機能障害を受けやすい時期でもあり、そこに他の原因が複雑に絡み合った結果として、生理的障害をも引き起こしやすくなります。

薬物の大量投与が為され続けたら、QOLの破綻は自明です。
日常生活そのものが成立しなくなりますので、病院やクリニックへの入院した場合に、より高額な医療費の支払いをしなければならなくなり、経済的負担はより大きくなります。

この場合、鍼灸での対処は、主に脚少陰経、脚陽明経、脚厥陰経、手厥陰経、手少陽経、脚少陽経の疎通改善となります。それも、部分部分だけではなく、全身に対する包括的施術となります。

鍼灸は何も身体的不調へのアプローチだけに留まるのではなく、内耳にある平衡感覚へのアプローチを促進させる役割を担っています。

自律神経の乱調や耳鳴り、眩暈に対する鍼灸施術は、医療保険による療養費の給付対象外(保険対象外)の為に、費用面ではやや高額となりますが、薬物等による弊害を無くす為にも、一刻も早い受術が必要不可欠です。